語音、語法、語彙の三者は密接に関連している。語音と語法、語彙の関係には問題が多い。ここでは「双声疊韻」についてのみ述べる。「双声疊韻」は漢語の特徴の1つだからである。多くの「双声疊韻」の現象は、語法と語彙の現象でもある。
まず「構詞法(単語構成法)」から述べる。ご存知の通り、「構詞法」は語法の問題であると同時に、語彙の問題でもある。
漢語は始めから単音節語ではなかった。先秦時代にはすでに大量の「双音詞(2音節語)」が存在した。漢語の「双音詞」には一種特殊な「構詞法」がある。多くは「双声疊韻」で構成されている。古人は純粋な「双音詞」(それ以上2つの詞素に分解できないもの)を「聯緜字」と呼んだ。「聯緜字」のうち、9割以上が「双声」または「疊韻」の単語である。これら「聯緜字」は、一部の人が推測するような単なる「擬声詞(擬音語)」(「丁當」など)ばかりではない。逆に、先秦時代の「擬声詞」は往々にして単音(「擊鼓其鐺」)または疊音(「呦呦鹿鳴」)のものだけであり、「双声疊韻」が使われるとは限らなかった。また「聯緜字」は、一般に思われているように多くが形容詞と副詞であるわけでもない。多くの名詞と動詞も含まれている。以下は『詩經國風』の中から抜粋した例である。
(一)名詞
(二)動詞
(三)形容詞
このような「構詞法」上の「双声疊韻」は、等韻家(韻図の研究者)がいう「双声疊韻」と比べて範囲がやや広い。非常に近い声母(「心」母と「山」母など)や非常に近い韻母(上古の「脂」部と「微」部など)はいずれも「双声疊韻」とされる。このため、「双音詞」の中には「双声」兼「疊韻」とされるものがあるが、2つの字は完全な同音であるわけではない。例えば、
| 輾轉 tĭan tĭwan⑧ | 契濶 k'ĭăt k'uăt |
| 蔽芾 pĭăt pĭwăt | 觱發 pĭăt pĭwăt |
| 栗烈 lĭĕt lĭăt | 厭邑 ĭap ĭep |
| 伊威 ĭei ĭwəi | 蠨蛸 siəu sĭau |
これらから、漢語の「双音詞」は語音連係の上で多様性があることが分かる。疊音詞、双声詞、疊韻詞、双声兼疊韻詞があるのである。
このような「構詞法」は、現代でもその作用を及ぼし、歴代の「構詞」方式の1つとなり、多くの新語がこれによって生み出されている。漢代の「侵尋」(「漸進」という意味)、晋代の「寧馨」、唐代の「取次」(「次第」という意味)や「瀟灑」、宋代の「陸續」「糊塗」「伶俐」「端的」、近代の「慌張」「骯髒」「鬎鬁」「利落」、現代呉語の「甲搭」[kaʔtaʔ](言い出しづらい、容易に満足しない)、「嗇刻」[səʔk'əʔ](けち)、現代粵語の「論盡」[lœn ʧœn](わずらわしい)、「淹尖」[im ʧim](けち)など、枚挙にいとまがない。
「双声疊韻」は、当時の語音に従って理解するべきで、そうしなければ容易に理解することはできない。例えば「契濶」は、現代北方語音で読むと([tɕ'i k'uo])、双声でも疊韻でもない。
また、語音の発展に伴い、新しい「双声疊韻」も新しい語音システムに適応することを知るべきである。例えば、唐代の鳥の鳴き声は「鉤輈」と描写されたが、上古音[ko tĭəu]で読むととても調和していないが、中古音「kəu ţĭəu]で読めば調和するのである。現代漢語の中の「舒服」は疊韻詞であるが、この疊韻詞は「入声」が消滅した後([ʂu fu])にできたはずである。中古音[ɕĭwo b'ĭuk]で読んでも疊韻にはならないからだ。
以上は「双音詞」の語音連係である。次に別の面から述べてみたい。単音詞と単音詞との間にも語音連係があるということである。それは反義詞、または古人が反義あるいはある種の関係を持つと理解していた語である。以下の語は、それぞれがいずれも「双声兼疊韻」とすることが可能だ⑨。
| 日月 ņĭĕt ŋĭwăt | 夫婦 pĭwɑ b'ĭwə |
| 內外 nuət ŋuāt |
以下は「双声」。
| 消息(消長) sĭau sĭek | 加減 kea keəm |
| 天地 t'ien d'ia | 男女 nəm nĭɑ |
| 古今 ka kĭəm | 生死 ʃĭeŋ sĭei |
| 文武 mĭwən mĭwɑ | 教學 keau g'eăuk |
以下は「疊韻」。
| 水火 ɕĭwəi xuəi | 旦晩 tan mĭwan |
| 老幼 ləu iəu | 聰聾 ts'oŋ loŋ |
| 新陳 sĭen d'ĭen |
これらから、上古漢語には一種の語形変化があったことが分かる。それは単語構成のみに用いるもので、「双声疊韻」で構成される。厳密な法則があるのか否かは、さらなる研究が待たれる。
各言語にはいずれも所謂「駢詞」(doublets)がある。「駢詞」には、ある語の旧形式と新形式とが同時に存在する。旧形式はしばしば書面語の中にだけ残存し、新形式は口語の中に存在する。例えば上古音の「呼」[xuɑ]は、中古音の「喚」[xuɑn]に変化した。「呼」と「喚」がつまり「駢詞」である。「駢詞」はおおよそ2種類に分けられる。1つは声母と主要元音がどちらも同じで、鼻音の韻尾があるかないかだけのものである。これを「対転」または「陰陽対転」⑩と呼ぶ。以下は「対転」のいくつかの例である。
| 呼喚 xuɑ(←xɑ), xuɑn⑪ | 逆迎 ŋĭăk(←ŋĭɐk), ŋiɑŋ(→ŋĭɐŋ) |
| 卬吾 ŋɑŋ, ŋɑ | 飴餳(糖) dĭə, d'ɑŋ⑫ |
もう1つは主要元音が互いに近いもので、「旁転」と呼ぶ。時には主要元音さえも完全に同じもので、韻頭の声母に少し違いがあるだけのものもある。古人はこれを「旁転」とは呼ばなかったが、現在はこれも「旁転」に分類している。以下は「旁転」のいくつかの例である。
| 域國 ɣĭwək kuək | 荼茶 d'ɑ, ɖ'a(←d'ea) |
| 觀看 kuan, K'ɑn |
「駢詞」は各時代に生まれる可能性がある。例えば「作」という字は、唐代には2種類の音があった。tsɑkとtsɑ⑬であり、それから少し下ってtsɔkとtsɔとなる。後代、違いを付けるために「做」(tsɔ)という字が作られた。「作」と「做」は明らかに「駢詞」である。
「駢詞」は同じ語から出たものであるが、それぞれに発展したため、意味が分岐した(域國、荼茶)。「駢詞」はまた、双音詞に合成されることもあった。「呼喚」「觀看」などである。
語音と語法、語彙の関係は多くの面を含んでいる。ここで述べた「双声疊韻」と「構詞法」の関係、「双声疊韻」と「駢詞」の関係は、例を挙げただけに過ぎない。